生命保険加入による「節税対策」の嘘

会社の業績が順調で、利益が多額に出そうなときに、節税対策として生命保険(全損タイプ・解約返戻金あり)の加入を勧める税理士・会計事務所などが非常に多いと思います。

結論から言うと、法人契約の生命保険で「実質的に」節税となるものは基本的にはありません。

確かに、支払った保険料が費用として計上されると、利益が圧縮されるため、それに応じて税額も低減されます。

しかし、保険を解約して返戻金を受け取った場合、その返戻金は収益となり税額が増加するため、それまでの税額の低減効果が一気に帳消しになります。

それどころか、保険料を支払っている期間は資金繰りが悪化しますし、通常は返戻金は多くても90%程度のため、結果的に会社の資金が少なくとも10%程度減少することになります。

実際は、保険を解約するまでの間に、社長に万が一のことがあった場合は保険金が下りるため、前述の資金の減少は、万が一の際の保証に対するコストと捉えることもできます。

そのため、そのコストが保証に対するコストとして見合っていると判断されるのであれば、保険の契約をしても良いと思われます。

 

私が実際に今までご相談を受けてきた事例では、比較的若い社長が5年後に解約返戻率がピークとなる商品の加入を検討することが多いようですが、解約するまでの5年間に社長に万が一が起きる可能性が何%程度あるのか、決して高くはないその可能性のために、会社の資金を10%程度減少させても構わないのかを、説明させて頂くと保険の契約を見送られることが多いです。

また、中小企業の現実として、解約返戻率のピークが到来するまでに、業績や資金繰りが悪化して、返戻率が低いタイミングで解約してしまい、多額の損失を被るケースが多いようです。

不必要に保険契約を斡旋して、資金繰りを悪化させたり、会社の資金を無駄に減らしたりせず、会社の資産を守ることも、私どもの使命であると思っております。

 

※保険解約時の保険金収入に係る増税を防ぐために、役員退職金を計上して保険金収入と相殺すれば良いと説明する税理士や会計事務所がいるようですが、その場合、役員退職金によって発生していたであろう繰越欠損金(翌期以降の利益と相殺される)が、保険金収入で発生しなくなるため、翌期以降に納税額が発生しやすくなりますので、最終的に税額が節約される訳ではありません。

 

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